「証拠じゃ…ないけど。」

そう呟いて口を開いたのは銀の少女。

夢の中での会話は夢ではないということを二人へ示すためと、彼女自身が確かめたいことがあったからナナセはサラへ問う。


「昨日の夢の中では、アズキはサラ婆に魔力を封印されていたって言っていたわ。

アズキの魔力はもとから大きかった…?」


昨日のアズキの秘密についての話では出てこなかった、昨日の真夜中に明かされた真実。


「そうだよ。

…昨日には言わなかったね。」

「うん。」

友達のこととなるといつになく真剣になる銀髪の彼女がサラの言葉にひとつ頷いた。


「誰にも分からない、封印を気づかれないような魔術であの子の魔術の扉に鍵をしていたのは、私だよ。」


色の薄い茶の老女の瞳が、いつになく真剣な色をしていて。

それがまわりに広がって、ここにいる三人にも緊張が伝わる。

「生まれてきたときには、あの子は神官になるには十分な魔力を秘めていた。

アズキを、神官にはさせたくなかったのさ。


国のために未来を読んで、それが当たり前のように扱われて。

…それは昔のことだけど、ね。」


昔の事でも、自分が経験してきたからこそ孫に辛い思いをさせたくなかったのだろう。


大きな先読みの力のある国民なら神官になるほかなくて、拒否権はないのだから。


「そうなんですか…。」

全く分からない訳でもないその気持ちにぽつりと相づちを打つ。

瞳は伏せて空色の光を失い。


沈黙を破ったのはコルタだった。

「それで?

どんな夢で、アズキはどうしていた?トーヤは?」


─そうだ、伝えなきゃ。

あたしが見たもの、全部。



そう思い、意を決して口を開いた。


話し終えると、アズキの親たちは絶句して複雑な顔をしたまま動かなかった。

「あたし、必ず二人を連れて帰ってきます。

…だから、心構えしておいて欲しいんです。」

せがむようなナナセの声が静かな部屋に重たく響く。

少女の青の光は、痛いくらいの切なさを滲ませて。


「分かったわ。

でもね、どんな姿になってもアズキは私達の娘よ。

嫌ったりはしないわよ。」


エリが優しく微笑めば、銀の少女の顔が泣きそうに歪む。

「その答えが聞けて、嬉しい…。」

本当に嬉しそうに笑い、また真剣な瞳でエリとコルタを射抜く。