動物たちも寝静まる真夜中。
リョウオウのソライの家の二階に二つ部屋を借りたナナセ達も眠りについていた。
その暗闇に、微かに銀が煌めいて。
布団にくるまり体を小さく丸めて眠る少女の瞳が、ゆっくりと開いた。
淡い柔らかな青い光が、暗闇に支配された部屋の中に広がっていく。
銀髪の隙間から覗く空色の瞳は焦点は定まっておらず、この世界を見ていなかった。
彼女は夢の世界に誘われて。
同じ夢の世界に誘われた遠くの少女と言葉を交わす。
二つの心が交わるとき、夢が繋がる。
真っ白な世界の中、空色の瞳は明るい茶髪の少女を映していた。
銀髪の少女は、薄い空色のワンピース。
茶髪の少女は、薄汚れた茶色いワンピース。
お互い眠りについたときの格好のまま。
アズキの服装が、今の現状を物語っていて。
「アズキ…。」
「ナナセ…。」
互いに泣きそうな顔で見つめ合う。
ルイスの街で夢を渡った時と同じ茶髪。
だけど不自然に前髪で隠れた左目。
─昔、とうさんがしていたように。
─あたしがしていたように。
「アズキ…、その目は…?」
ナナセの視線の先にある自分の目に気づいたアズキは、ゆっくりと左手で前髪を掻き上げ左目を晒す。
彼女の左と右とは色違い。
前髪に隠れた左の瞳がルビーに似た色を放って。
「ナナセとおんなじだね…。」
明るいいつもの声とは違って、泣きそうな掠れた少女の声。
「…そうだね。」
─あたしと同じ、色違い。
痛々しい笑顔を見せる茶髪の少女に向けて、精一杯笑った。
「アズキたちは、今どこに?」
「きっと私、メノウにいるよ。」
ナナセの問いに、左目をまた隠してアズキは答えた。
メノウは、ルグィンが見当を立てていた街。
「助けに、行くよ。」
二人はお互いに歩みを進めてゆっくりと近付く。
手を伸ばせば、触れられる距離。
「…嬉しい…、けど怪我しないでね…無理しないでね…。」
そんな優しい言葉にナナセは胸が痛くて。
「恨んで…ないの?
あたしがあなたを巻き込んだのよ?」
今もなお自分を受け入れてくれる彼女を責めるように言うと、穏やかに目の前の少女は言葉を紡ぐ。
「辛いけど、戦うことも何もできなくて、足枷になってる私が辛いの。
魔力は私はそろそろ目覚める頃だったみたいだし。」
お祖母ちゃんが封印していたんだって、とアズキは続けた。
教えられた事実にナナセは目を見開く。
神官にしたくなかったみたいだよ、とも茶髪の少女は困ったように笑って言った。
だんだん声が聞こえなくなってきて、視界が狭くなってきた。
「時が悪かっただけ。
ね、私たち友達でしょう?
信じてるよ。ナナセ。」
白い光に包まれて、視覚も聴覚も役に立たなくなる中で、呼ばれた名がひどく温かくて。
空色の瞳に涙が滲んだ。
「アズキも!無事でいて!」
ナナセが必死で叫んだ声に、霞んでいく視界の中で見慣れたあの笑顔が見えた気がした。
リョウオウのソライの家の二階に二つ部屋を借りたナナセ達も眠りについていた。
その暗闇に、微かに銀が煌めいて。
布団にくるまり体を小さく丸めて眠る少女の瞳が、ゆっくりと開いた。
淡い柔らかな青い光が、暗闇に支配された部屋の中に広がっていく。
銀髪の隙間から覗く空色の瞳は焦点は定まっておらず、この世界を見ていなかった。
彼女は夢の世界に誘われて。
同じ夢の世界に誘われた遠くの少女と言葉を交わす。
二つの心が交わるとき、夢が繋がる。
真っ白な世界の中、空色の瞳は明るい茶髪の少女を映していた。
銀髪の少女は、薄い空色のワンピース。
茶髪の少女は、薄汚れた茶色いワンピース。
お互い眠りについたときの格好のまま。
アズキの服装が、今の現状を物語っていて。
「アズキ…。」
「ナナセ…。」
互いに泣きそうな顔で見つめ合う。
ルイスの街で夢を渡った時と同じ茶髪。
だけど不自然に前髪で隠れた左目。
─昔、とうさんがしていたように。
─あたしがしていたように。
「アズキ…、その目は…?」
ナナセの視線の先にある自分の目に気づいたアズキは、ゆっくりと左手で前髪を掻き上げ左目を晒す。
彼女の左と右とは色違い。
前髪に隠れた左の瞳がルビーに似た色を放って。
「ナナセとおんなじだね…。」
明るいいつもの声とは違って、泣きそうな掠れた少女の声。
「…そうだね。」
─あたしと同じ、色違い。
痛々しい笑顔を見せる茶髪の少女に向けて、精一杯笑った。
「アズキたちは、今どこに?」
「きっと私、メノウにいるよ。」
ナナセの問いに、左目をまた隠してアズキは答えた。
メノウは、ルグィンが見当を立てていた街。
「助けに、行くよ。」
二人はお互いに歩みを進めてゆっくりと近付く。
手を伸ばせば、触れられる距離。
「…嬉しい…、けど怪我しないでね…無理しないでね…。」
そんな優しい言葉にナナセは胸が痛くて。
「恨んで…ないの?
あたしがあなたを巻き込んだのよ?」
今もなお自分を受け入れてくれる彼女を責めるように言うと、穏やかに目の前の少女は言葉を紡ぐ。
「辛いけど、戦うことも何もできなくて、足枷になってる私が辛いの。
魔力は私はそろそろ目覚める頃だったみたいだし。」
お祖母ちゃんが封印していたんだって、とアズキは続けた。
教えられた事実にナナセは目を見開く。
神官にしたくなかったみたいだよ、とも茶髪の少女は困ったように笑って言った。
だんだん声が聞こえなくなってきて、視界が狭くなってきた。
「時が悪かっただけ。
ね、私たち友達でしょう?
信じてるよ。ナナセ。」
白い光に包まれて、視覚も聴覚も役に立たなくなる中で、呼ばれた名がひどく温かくて。
空色の瞳に涙が滲んだ。
「アズキも!無事でいて!」
ナナセが必死で叫んだ声に、霞んでいく視界の中で見慣れたあの笑顔が見えた気がした。

