「あたしはお母さんでも、何でもないけど。
ルグィンが幸せになってほしいと、本当に願ってるよ。」
下を向いて、顔を膝で隠して、だけどはっきりと最後まで彼女は言い切る。
そんな彼女に金の瞳の少年は、彼女の方を向けずに固まる。
「あたしも居場所はいられなくなったけど、今は…そこにいたい場所ができたの。
居場所は、ここに、あるよ。」
励ましたつもりが、溢れ落ちたのは少女の本音。
ここにいたいと、願う声。
それに気付いた銀髪の少女は、右手で顔を覆って慌てふためく。
「…ッ!
さっきの、忘れて…。」
落ち着いて考えてみれば、恥ずかしいことしか言っていなくて。
自分から手を重ねまでして。
今からその行動を撤回することもできずに、今度はナナセが固まる番だった。
自らの行動を把握してしまえば、今度は重ねた手に神経を使ってしまう。
隣の少年の骨張った手は、少女の小さな手では包めなくて。
重なった部分からは柔らかい温度を貰って。
背中は冷たい風を受けて寒いのに、手からじぃんと暖かくなって。
自然と緊張は落ち着いて。
手なんか進んで誰かと重ねたことは少ないから、よく分からないけど。
ルグィンの手は何かが違うと感じた。
─性格通りの温かさと、大きな安心をくれる。
─そんな、手。
そこまで考えて、ナナセの思考は歯止めがかかった。
─なにしてるんだろ、あたし。
1人赤面しているとナナセは思っていたが、それは隣も同じことで。
─なにされてるんだ、俺。
ふと聞いてほしくなって始めた話下手な自分の身の上話に励ましてくれた銀の少女。
感謝は上手く表せず、自分を励ますために重ねられた優しい彼女の冷えきった手に、熱を分ける。
緊張から手はいつもより温かくてちょうどよかった。
─女の手って、小せぇのな。
重ねられた手は自分のそれよりふたまわりほど小さくて。
隣に顔を向ければ、俯き顔を隠した少女。
ルグィンは重ねられた手ひっくり返して、彼女の手を包み込む。
振りほどかれるのかと警戒し、少しだけ強張った少女の手は、握られたことにすぐに緊張を解いた。
「なぁ。」
「なに。」
お互い声は震えていた。
「…ありがと。」
そんな低い声が空気に染み込めば、空色の瞳がこちらを向く。
彼女の赤い頬まで見えるこの瞳を彼女は見て、小さく笑った。
「こちらこそ、励ましてくれて、話してくれてありがとう。」
それきり会話は続かない。
そっとふたりは砂の撒かれたような空を見上げる。
冷たい冬の夜風が身を切るけれど。
そんな寒さなんか気にならないくらい、この時間が堪らなく惜しいと互いに思った。
ルグィンが幸せになってほしいと、本当に願ってるよ。」
下を向いて、顔を膝で隠して、だけどはっきりと最後まで彼女は言い切る。
そんな彼女に金の瞳の少年は、彼女の方を向けずに固まる。
「あたしも居場所はいられなくなったけど、今は…そこにいたい場所ができたの。
居場所は、ここに、あるよ。」
励ましたつもりが、溢れ落ちたのは少女の本音。
ここにいたいと、願う声。
それに気付いた銀髪の少女は、右手で顔を覆って慌てふためく。
「…ッ!
さっきの、忘れて…。」
落ち着いて考えてみれば、恥ずかしいことしか言っていなくて。
自分から手を重ねまでして。
今からその行動を撤回することもできずに、今度はナナセが固まる番だった。
自らの行動を把握してしまえば、今度は重ねた手に神経を使ってしまう。
隣の少年の骨張った手は、少女の小さな手では包めなくて。
重なった部分からは柔らかい温度を貰って。
背中は冷たい風を受けて寒いのに、手からじぃんと暖かくなって。
自然と緊張は落ち着いて。
手なんか進んで誰かと重ねたことは少ないから、よく分からないけど。
ルグィンの手は何かが違うと感じた。
─性格通りの温かさと、大きな安心をくれる。
─そんな、手。
そこまで考えて、ナナセの思考は歯止めがかかった。
─なにしてるんだろ、あたし。
1人赤面しているとナナセは思っていたが、それは隣も同じことで。
─なにされてるんだ、俺。
ふと聞いてほしくなって始めた話下手な自分の身の上話に励ましてくれた銀の少女。
感謝は上手く表せず、自分を励ますために重ねられた優しい彼女の冷えきった手に、熱を分ける。
緊張から手はいつもより温かくてちょうどよかった。
─女の手って、小せぇのな。
重ねられた手は自分のそれよりふたまわりほど小さくて。
隣に顔を向ければ、俯き顔を隠した少女。
ルグィンは重ねられた手ひっくり返して、彼女の手を包み込む。
振りほどかれるのかと警戒し、少しだけ強張った少女の手は、握られたことにすぐに緊張を解いた。
「なぁ。」
「なに。」
お互い声は震えていた。
「…ありがと。」
そんな低い声が空気に染み込めば、空色の瞳がこちらを向く。
彼女の赤い頬まで見えるこの瞳を彼女は見て、小さく笑った。
「こちらこそ、励ましてくれて、話してくれてありがとう。」
それきり会話は続かない。
そっとふたりは砂の撒かれたような空を見上げる。
冷たい冬の夜風が身を切るけれど。
そんな寒さなんか気にならないくらい、この時間が堪らなく惜しいと互いに思った。

