空色の瞳にキスを。

サラは頷いて肯定した。

「あぁ。
わしの見立てでは…わし以上の予知ができるはずだよ。」

国の神官を務めていた彼女にここまで言わせ、元神官を越える魔術を秘めたアズキ。

どれくらいのものなのだろう、とナナセは背筋が凍る思いがした。

「アズキはそんな力を持ってるの…?
私知らなかった…!

お母さん、何でアズキに言ってくれなかったの…!」

アズキの母、エリが責めるような声で反論する。

「アズキには言ったさ。
ただ、お前を含めて…わしの子供らにはわしの力は遺伝しなかったからね。


先見の力と言われるこの力は、未来を垣間見ることのできる力。

珍しくて、危険で、尊い力といわれておる。

だから言わなかったのさ。」


その言葉を聞いて、エリはなにも言えなくなる。

ぐ、とこらえて握りしめた拳をおろす。


言いたい言葉を飲み込んで、辛うじて一言発した。

「そう…。」


そんなエリに、サラは少し悲しそうな顔をする。

「…悪かったな、でも言えぬのだよ。

こんな場所に元神官がいるなんて。

平和に暮らすには、誰にも言わない方が無難だったのさ。」


気まずいとでも言うように、サラの視線がエリから逃げて、ナナセに止まった。

「アズキは、先見の才を持ってる。

その力は、未来が見える。

過去も、今も、見えるのさ。

…諸刃の剣さ。

それに加えてあの子は、莫大な魔力を持っている。

容易い魔術なら習っていなくても詠唱なしでこなすぞ。」

サラの目尻のシワが深くなる。


「…アズキの魔力は…あたしが出ていくまではそんなに大きくなかった…。

少し意識したら身体能力が上がるくらいで、外に影響が出るレベルじゃなかったでしょ?


そのアズキの力は…あたしの、せい?」

行き着いた答えを、ナナセは泣きそうな声で紡ぐ。


心のどこかで予測はしていたとはいえ、ぐらぐらと動揺する自分の心を押し隠して、真っ直ぐにサラを見つめる。

サラは頷き一言溢す。


「…悪いが、そうだ。

ナナセ王女、あなたの魔力がきっかけでアズキの魔力の扉は開いたのだよ。」


その答えを聞いて、ナナセは両手で顔を覆う。

「…あたしがあの時魔術をかけなかったら…!」

後悔は計り知れなくて、底がなくて、涙が滲んだ。