足元に崩れて浅い息を吐いているスズランを見下ろして扉に歩み寄るトキワ。

彼の姿をちらりと視界に捉えた黒猫は、焦りの色をさっと浮かばせる。


「…っ!」

サシガネと戦いながら、自分の胸に動揺が胸に染みるのが分かった。


─ナナセ。

彼女が奥にいる扉から目が離せなくなる。

彼女はまだ眠らされたまま。

─絶対に今彼らを行かせられない。

そんな思いが彼の足をトキワへと向かわせる。


「おっと、行かせねぇぞ。」

そんな声と共に、ルグィンは現実に引き戻される。


「俺を倒さなきゃ、王女様は守れないぜ?」

目の前ではサシガネがまた剣を振り上げていて、ルグィンはまたそれをかわして距離を置く。


「お前らの大事な王女様は俺らが頂くぜ?」

トキワが部屋の扉を開ける姿を確認したサシガネは、余裕の表情で口を開く。

焦りの色を露骨に浮かべるルグィンにサシガネはにやにやと下卑た笑いを浴びせる。

それを見てルグィンは感情を沈めて、サシガネの視界から消え失せる。


次の瞬間にサシガネの懐に現れた黒猫は、みぞおちに一発拳を埋める。

「…ぐっ!」

「油断は…敵だと知ってるか?」

一言溢すと倒れること彼を見ることなく、次のとどめもささずに、黒猫はトキワがたった今開け放った扉へと駆けていく。


─間に合うか、どうか。