暗闇の中で打ち出される弾丸を難なく交わしてサシガネとトキワは未だ銀髪のスズランに迫る。

二人分の攻撃をスズランはひらりとかわす。

ふわりと揺れた銀髪が、彼女の頭から滑り落ちた。

落ちた白銀のかつらを足元に、魔装銃を構えるスズランを視界に映して、サシガネはよく切れる頭の隅で考える。


─なぜ黒猫は来ない?

いつも王女の護衛のように付いて回る彼らなのに。

─王女を逃がそうとしているのか?

サシガネは剣を振りながらで考える。

逃げられたなら都合が悪い。
100億の首は、そうそういないのだから。

部屋が見張っていたが、王女が出てきた気配は全くなかった。

だが、もしも姿をくらまされたら、こちらは不利だ。


銃弾をかわしながらざっと回りを見渡して、黒猫を探す。

闇に支配された視界の隅に黒い人影が見えた。

奥の部屋から扉を開けて出てきた黒い人影は、スズランでも、トキワでもない。


「いた…!」

サシガネの興奮は思わず声に出てしまう。


サシガネに音をほとんど立てずに、髪をなびかせて駆けてくる華奢な少年。


─際闇に映える金色と、闇より深い漆黒の髪の少年。


─黒猫。


彼は素手で二人の剣に立ち向かう。


─もしも黒猫たち二人が、王女を逃がす時間稼ぎの為にここにいるなら、一刻も早く彼らを倒さねば。

─黒猫たちも王女を狙っているなら、彼らを倒す。

─そうでなくても、生かしておいて有利なことはないだろう。

そう瞬間に考えて、王女が眠らされていると知らないサシガネのルグィンを睨む瞳が鋭くなる。

「お前は…俺が倒す。」


小さな声で、金髪の狩人は呟く。

サシガネは間合いを一瞬で詰めて、剣を振りかぶる。