冬の日没は早く、逃したくない時はあっという間に過ぎ去る。


夜の闇に静まり返ったナナセの部屋。


廊下を走る音や、外の動物の鳴き声がこの部屋に響く。


スズランとルグィンの二人はいないようで、ナナセはひとり真っ白なベッドに寝かされている。


スウスウ、と規則的な浅い呼吸を繰り返す。

安心しきった寝顔は、そこには王女の風格なんてなく。

年相応の無邪気な顔。


その安泰を、破るものがいる。


ギィ、と部屋の扉が開く。

静かに開けられた扉も、こんな静かな部屋にはその音がよく響く。


扉の隙間から褐色の瞳がサッ、とあたりを見回す。

「誰もいないようだぜ。」


無人だと確認して、二人の狩人が音を殺して部屋へ入ってくる。

「…あぁ。いくぞ。」

狩人二人組が、闇に紛れて不安を持ち込む。

電気もつけないで、闇に慣れたサシガネとトキワがスタスタと歩く。


「おっ、居た居た…。
ルイ王女…。」

布団を被り目を閉じているナナセ王女のベッドの目の前に立つ。


サシガネが腰のベルトに隠し持っていたナイフを引き抜く。

傷は少し付けて抵抗を防ごうとするのが二人の計算。

闇に刃物が鈍い銀色を放つ。


片手のナイフを振り上げて、彼女の腕を狙う。


床に落ちた影が、二人の行動を見守る。


ナナセの細い腕に、銀灰のナイフを布団の上から埋めるために、キラリと光ったそれをサシガネが振り下ろす。

眠っている少女の抵抗を阻むために少しだけ、深く。



彼女の腕のある場所に、ナイフを勢いよく突き刺す。

柔らかい布団が裂かれ、羽毛が中から飛び出してふわりふわりと宙を舞う。



ナイフを持つサシガネと、隣で刀を持つトキワ。

彼らと雲隠れした月明かりに星のように光る羽毛がこの部屋に異質な雰囲気を醸し出す。




─違う、何かがおかしい。

経験による直感が、狩人たちの胸に警鐘を鳴らした。