あんずはさ、ぼくを迎え入れるために、本を一冊、読んでくれてたんだよね。

犬の飼い方・しつけ方の本。

ぼくはそのおかげで、ものすごく心地いい毎日が送れたんだよ。


初めてあんずのうちで過ごす夜は心細くて、きゅんきゅん情けない声で夜鳴きしてた。

だけど、誰ひとり僕のそばにはきてくれなかったね。

後から知ったんだ。

夜鳴きで人がそばに来ると、鳴いたら来てもらえると思って、ぼくたちは夜鳴きをやめることができないんだって。

そして、あんずがぼくの鳴き声を布団の中でじっと我慢していたことも。

あんず、あの時はごめんね。