さすがに今回は迷子にならずに、カフェまでの道順を順調に辿っていく。


周囲の景色を頭に叩き込みながら歩いているうちに、道の向こうにカフェが見えてきた。


あの中に、柿崎さんとお姉ちゃんがいる。


そう思うとつい、気持ちが沈んで足取りが重くなった。


……だめだめ! ほら、元気出して行こう!


失恋の痛みなんて、すぐに楽になるさ。女は失った恋の数だけ美しくなるのよ!


そんなふうに自分を叱咤激励しながら、ドアの前に立ったあたしは大きく息を吸った。


ニッっと口角を上げて無理に笑顔を作り出し、そのまま笑顔を顔に貼りつけて、ドアノブに手を伸ばす。


「……あれ?」


あたしは笑顔の状態のまま首を傾げた。


開かないじゃん。カギ閉まってる。


でも、いらっしゃいませの看板はちゃんと出てるんだから、準備中じゃないよね?