「諦めようとしてるからだろ?」


投げやりな問いかけに速攻で返事が返ってきて、びっくりして涙が引っ込んだ。


顔を上げると、すぐ目の前に大地君がしゃがみ込んでいて、すごく真面目な顔してあたしに話しかけてくる。


「詳しい事情はわかんねえけど、とりあえずひとつだけわかった。お前、俺の兄貴のことが好きなんだな?」


ちょっとだけ沈黙してから、あたしは素直にうなづいた。


ここまで盛大にバラしてしまった以上、隠しようがない。


「うん。好きなの。あたしは柿崎さんのことが好き」


「そうか……。うーん」


大地君が頭を抱えて、急に唸り声を上げた。


そして勢いよく立ち上がったかと思ったら、腕組みしながらウロウロと歩き回り、やたらと唸っている。


どうしたんだろう? まるでストレスの溜まった動物園のクマみたい。


「まさかなぁ。そうきたか。これは計画変更か? いや、でも逆に……」


ブツブツ言って立ち止まったり、両手で頭をガシガシしたり、またウロウロ歩き始めたり。


なんなの? めっちゃ真剣な顔で悩んでるみたいだけど。


ポカンとしながら目で追っていると、大地君が急に「よし! 決めた!」と叫んだ。


その大きな声にビクッとしていると、大地君はまたしゃがみ込んで、あたしと目線を合わせて言った。


「俺さ、実は一海さんが好きなんだよ」