運命みたいに恋してる。


それは今から十年前。


空から押さえつけるような夏の強烈な日差しが、頭のてっぺんをジリジリ焼いた日。


まだ幼い少女だったあたしは、ひとりでおつかいに行った帰り道の途中、不注意で川に落ちてしまったの。


不幸にもその川はとても深くて、あたしの足は底まで届かなかった。


溺れたあたしは、必死にもがいたの。


でも急流に流されてしまって、幼いあたしは成すすべもなく……。


「ストーップ」


組んだ膝の上に頬杖をついて、諦め顔で聞いていた花梨ちゃんが、こっちを見ながら片手を上げた。


「その話は、事実とちょっと違う」


「……どこが?」


「七海ちゃんの話しっぷりだと、まるで『千と千◯の神隠し』みたいな、清流に飲み込まれた不運な少女みたいじゃん」


「実際そうだもん」


「いや、違うでしょ。七海ちゃんが落ちたのは、三丁目の駄菓子屋の向かいに流れてる、ただのドブじゃん」


「い、一応は『川』でしょ⁉︎ たとえドブ川だったとしても!」


我が家のすぐ近くには、昔からの駄菓子屋さんが一軒ある。


ズラリと並んだお菓子の中から自分の好きなお菓子を選んで買うのが、当時のあたしの一番の楽しみだった。


しかもあの日は、クジが当たったの。それも三回連続で!


その快挙に浮かれてスキップしながらの帰り道、足がもつれて落っこちたの。道の脇のドブ川に。


当時のあたしは、あまり運動神経が良くなかったんだよなぁ。今もだけど。


横幅2メートルくらいの古い川は、コンクリ整備がずっと遅れていて、土がむき出しのまま。


そのせいか水も濁っていて、もう、見るからに汚かった。そこに思いきり落ちちゃったんだよね。