運命みたいに恋してる。

体温がスーッと下がって視界が暗くなり、あたしは呆然と立ち尽くした。


連れてった? お姉ちゃんを、あのカフェに?


柿崎さんが働いていたあのカフェに、この人が連れて行ったの?


…………。


こ……。


この……。


「こんの、大ばかやろーーーー!」


呪縛が解けたあたしは絶叫しながら立ち上がった。


そして足元の小石を両手で拾って、目の前の男に思いっきり投げつけてやった。


「うわ!? なにすんだよ!」


「ばか! ばか! ばかーー!」


何度叫んでも叫び足りない。どれほど石を投げても投げ足りない。


だってあんたが……あんたが余計なことさえしなきゃ!


「あんたが余計なことさえしなきゃ、あのふたりは出会わなかったのに!」


涙がブワッと溢れて、叫ぶ声も涙声になる。


それでもあたしはどんどん石を拾って投げつけながら、声を限りに叫び続けてやった。


「ふたりが出会わなければ、あたしは失恋しなかったのに!」


「し、失恋って、なんのことだよ!?」


あたしが投げる石を必死に避けながら叫び返してくる大地君に、あたしは怒鳴り声を張り上げた。


「本当は、お姉ちゃんじゃなくてあたしが柿崎さんと結ばれるはずだったんだ!」


ずっと言いたくて、でも言えなかった感情が、火を噴いたように暴れだす。


一度口から飛び出し始めた言葉は、もう自分でも止められない。


かまうもんか。ぜんぶぜんぶ、こいつにぶちまけてやるんだ!


「運命の恋を自分の姉に取られたんだよ⁉︎ よりによって自分の姉に! それがどれほど苦しいかわかる!?」