あの劇的な再会と衝撃の失恋から、数日が経過していた。


『柿崎さんへの想いは忘れよう』と心に固く誓ったものの、現実はそう簡単にいっていない。


「それは無理もないと思うよ? 七海ちゃんの責任じゃないよ」


隣に座って慰めてくれる花梨ちゃんの優しい声が、しみじみと心に染みる……。


今日もまた放課後、グチを聞いてもらうために、この場所にふたりで来てしまった。


校舎裏の敷地内の端っこに、使われなくなったガラクタばかりを放り込んでいる古くて汚い物置がある。


さびれた雰囲気が学校の怪談スポットになっていて、昼でも気味悪がって誰も寄りつかないから、人の目も耳も気にせず話すことができた。


用意していたアウトドアクッションをお尻の下に敷いて、物置の陰で話す内容はもちろん、お姉ちゃんのことだ。


「一海さん、今は絶好調だからね。幸せ垂れ流し状態でしょ?」


「うん。レバーの壊れた水洗トイレ状態……」


あたしに柿崎さんとのことがバレてしまった後、お姉ちゃんはすっかり安心しちゃったらしくて。


今まで溜まっていたノロケ話を、すごい勢いで放出し始めた。


柿崎さんとの大切な思い出とか、デートの詳細とか、言葉、仕草にいたるまで、次から次へとあたしに語ってくる。