カフェから一歩外へ出たとたん、全身から力が抜けて、精神力もプツンと途切れてしまった。
気の抜けたサイダーみたいな状態で見る町の風景は、なんだかひどく色あせて見える。
現実感が乏しくて、足元も頼りない。
花梨ちゃんと並んでトボトボ歩き出しながら、まぼろしの世界を彷徨っているようだった。
そんな不安定なあたしに、花梨ちゃんが淡々と話しかけてくる。
「結局、ここがどこだか聞くの忘れちゃったね。しかたないから誰かその辺の人に聞こうか」
普段通りに接してくれる花梨ちゃんの思いやりが、ジーンと心に染みた。
「花梨ちゃん」
「なに?」
「さっきは、守ってくれてありがとう」
花梨ちゃんが一瞬立ち止まり、なにか言いたそうな素振りを見せたけれど、結局なにも言わずにあたしの手をギュッと掴んで、また歩き出す。
花梨ちゃんの手の柔らかさが、『もう大丈夫だからね』って言ってくれている気がした。
おかげであたしの張り詰めた心がどんどんほぐれて、ようやく涙がじんわり浮かんでくる。
そうだよね。もう大丈夫だから、泣いてもいいんだよね?
「う……。うえぇ~……」
あたしは花梨ちゃんと手を繋いで歩きながら、顔をクシャクシャにして、子どもみたいに声を上げて泣いた。