「それじゃあたしたち、これで帰ります。コーヒーごちそうさまでした」


そう言うなり花梨ちゃんが頭を下げたので、柿崎さんが慌てて引き留める。


「もう帰るの? もっとゆっくりしていってよ」


「すみません。あたしたちこれから買い物する予定があって。ね? 七海ちゃん」


あたしは黙ってコクリとうなづいた。柿崎さんとお姉ちゃんも、それ以上は無理に引き留めなかった。


「そう。それじゃ仕方ないわね」


「ふたりとも、またおいでね。今度はゆっくり話そうね」


「はい。ありがとうございます」


花梨ちゃんがあたしの腕をしっかりつかんで、引っ張るように玄関へ連れていく。


「七海ちゃん、また来てね!」


玄関のドアを開けるとき、明るい柿崎さんの声が聞こえて、あたしはぎこちなく振り返った。


そして、できるだけふたりの笑顔を見ないようにしながら、ペコリと頭を下げて静かにドアを閉めた。