運命みたいに恋してる。

鼻の奥が痺れるように痛んで、あっという間に目が潤んで視界がボヤけてきて、あたしは慌てて下を向いた。


やばい。泣く。


でも泣いちゃダメだ。この場で泣き出しちゃったらごまかせない。


ぜんぶバレたら自分が情けなさすぎる……。


「実はあたしたち、一海さんの部屋で写真を見ちゃったんです」


急に聞こえた花梨ちゃんの声に驚いて涙が引っ込んだ。


写真? 花梨ちゃん、なにを言っているの?


そう思って顔を上げると、今までずっと沈黙していた花梨ちゃんがイスから立ち上がって、お姉ちゃんと話している。


「前に七海ちゃんの家に遊びに行ったとき、偶然、一海さんが笑顔で男の人と写っている写真を見つけたんです」


そんな事実はまったくない。


たぶんあたしを助けるために、花梨ちゃんがとっさに口から出まかせを言っているんだろう。


たしかにお姉ちゃんの性格なら、好きな人の写真をプリントアウトしてこっそりと眺めて、ひとりで幸せを噛みしめていそうだ。


そしてやっぱり心当たりがあったのか、お姉ちゃんがうまく話に乗ってきた。


「あ。あの、机の引き出しに隠していた写真かしら?」


「はい。『絶対これは彼氏だ』って直感しました。でも盗み見たから言い出しにくくて、ふたりで黙ってたんです」


「まあ。そうだったのね」


「黙って写真見ちゃってごめんなさい」


「気にしないでいいのよ。ちょっと恥ずかしいけど」


お姉ちゃんはあたしと花梨ちゃんを交互に見ながら、優しく微笑んだ。


きっとあたしが黙り込んでいるのは、罪悪感からだと思っているんだろう。