「ちゃんと紹介するわね。こちらは柿崎拓海さん」


……そんなの、知ってるよ。


名前は今日まで知らなかったけど、柿崎さんのことは、ずっと前から知ってるよ。


「お姉ちゃんたちね、知り合ってもう一年以上になるのよ」


あたしは十年前から知ってるよ。ずっとずっと前に、あたしたちは出会っているんだもん。


「それで、あのね。えーっと、あたしたち……」


――ドクン、ドクン、ドクン。


鼓動が嫌な音を立て続けて、手のひらにじわっと冷たい汗が滲み出てきた。


お姉ちゃんはモジモジしながら、助けを求めるように隣の柿崎さんを見上げている。


柿崎さんがお姉ちゃんに向かって大きくうなづくのを見て、あたしの不快な鼓動が最高潮に高まり、背中に冷たい汗がにじんできた。


―― ドクン! ドクン! ドクン!


「七海ちゃん、僕たち……」


言わないで。聞きたくない。


だってその先を聞いちゃったら、あたしの十年間の恋が……。


「実は僕たち、付き合っているんだ」


巨大な刃物で頭からバッサリ斬りつけられたような、激しい痛みと絶望を感じた。


ああ……聞いちゃった……。