「一海、驚いたかい?」


「もちろん驚いたわよ! どうして七海がここにいるの?」


お姉ちゃんは、肩に手を置いている柿崎さんを咎めもせず、キョトンと丸い目をして柿崎さんを見ている。


柿崎さんも、それがあたり前のような自然な態度だ。


「七海ちゃん、迷子になったんだって。それで偶然この店に入って来たんだよ。さすがは方向オンチな一海の妹だなって思ったよ」


「まあ、拓海ったらヒドイわ」


「あはは。ゴメンゴメン」


ぷくっと膨れるお姉ちゃんと、楽しそうに笑う柿崎さんを、あたしは黙って見ていた。


さっきからずっと、ドクンドクンと鳴り続けている鼓動が苦しくてたまらない。


このまま黙っていると、どんどん息苦しくなりそうで、あたしは思い切って口を開いた。


「……ねえ。ふたりは知り合いなの?」


するとお姉ちゃんが、すごく恥ずかしそうにコクンとうなずいた。


頬を染めたその表情に、余計に胸がゾワゾワして怖くなる。


冷たい予感に怯えるあたしに、お姉ちゃんが柿崎さんのことを紹介し始めた。