朗らかな声でお姉ちゃんの名前を呼ぶ柿崎さんに、あたしは呆気にとられた。


な、なんで柿崎さんがお姉ちゃんの名前を知ってるの? ふたりは知り合い?


しかも『一海』って、呼び捨て?


「拓海」


おまけにお姉ちゃんまで柿崎さんの名前を呼び捨てにしたから、あたしはもうすっかり仰天してしまった。


あたしのお姉ちゃんは男の人に免疫がない。


だから男の人を呼び捨てなんて馴れ馴れしい真似は、絶対にしない。


なのに、当たり前のようにお互いを呼び捨てしあっている事実に、あたしの心臓は不穏な音を立て始めた。


……嫌な、予感がする。


ざわつく胸を懸命になだめるあたしの目の前で、柿崎さんがお姉ちゃんに近づいて行って、お姉ちゃんの肩にそっと手を置いた。