運命みたいに恋してる。

「ところで七海ちゃんたちは、どうしてここに?」


あたしたちが座ったテーブルの脇に立った王子様が、不思議そうに聞いてきた。


「僕がこの店にいることは知らなかったようだし、僕に会うために来たわけじゃないよね?」


いいえ! あなたに会うためです!


そのためにあたしはこの世に生まれてきたの!


あなたのことがずっと好きでしたー!


……って、叫びたいところをグッとこらえて、あたしはできるだけ冷静に答えた。


「あたしたち、実は迷子になっちゃったんです。どこか休む所を探していて、偶然この店を見つけたんです」


「へえ? たまたま迷子になって見つけたお店に僕がいたってこと? それはすごい偶然だなあ!」


「本当にすごい偶然ですよね! これはもう偶然って言うより確実に運命……」


「すみません。オリジナルブレンドお願いします」


オーダー表を眺めていた花梨ちゃんが発した冷静なひと言で、あたしの運命論は不発に終わってしまった。


花梨ちゃんてば、もう! おかげで大事なタイミング逃しちゃったじゃん!