「ねぇ、キミ。ひょっとして七海ちゃんじゃない?」


その声に、あたしの体がピクンと大きく反応した。


ゆっくりゆっくり、あたしは後ろを振り返る。


お、王子様。今、あたしの名前を呼んだの……?


「あぁ、やっぱり七海ちゃんだ」


そう言ってニコリと微笑む優しい笑顔が、十年前のあの笑顔とピッタリ重なった。


あのときよりもずっと背が伸びて、肩幅が広くなって、男らしくカッコよくなった王子様。


でも少しブラウン寄りの髪と瞳の色や、色白な肌はあの頃のまま。


涼しげな優しい声で、あたしの名前を呼んでいる目の前のこの人が、奇跡の産物に見える。


この人は、やっぱり王子様だった。


それに、あたしのことを覚えててくれたんだ!