運命は強大無比だから、ひょっとしたら太刀打ちできないかもしれない。


頑張ったところで、その努力は報われないかもしれない。


また悲劇に見舞われるかもしれない。泣くかもしれない。苦しむかもしれない。


でもそれは、あくまでも『かもしれない』だけ。


『かもしれない』だけのことに怖気づいて、逃げ出したくない。


起きるか、起きないかもわからない不確かな未来を恐れて、この大切なものを諦めたくない。


諦めるくらいなら、飛び込んで戦う。


だってそれほどまでにかけがえのない存在を、愛する人を、見つけてしまったんだから……。


「お母さん」


「父さん」


いままでずっと、ひと言も話さなかったお姉ちゃんと柿崎さんが、並んで正座してお母さんとおじさんを見ていた。


「あたしたちも同じなんです」


「それほど愛するものを見つけてしまったんです」


ふたりはしっかりと手を握り合い、静かに、真っ直ぐに、そう言った。