ねえ、お母さん。


お父さんと結婚なんかしなきゃよかったって思ってる?


あたしたちのことなんか、産まなきゃよかったって思ってる?


そのせいで、自分は不幸になったと思ってる?


聞いてみたいけど、怖くて聞けなくて、考えないようにしてた。


でも、ずっとドロのように心の奥に沈んで、あたしの気持ちをチクチク刺すの。


『お母さんは、あたしたちのせいで不幸なのかもしれない』


そんな不安が、いつも頭のどこかであたしを責めたてる。


「俺もまったく同じこと、親父に対して思ってる。親父は母さんが病気になってから本当に苦労したから」


大地は畳にダランと足を投げ出して、「つらいよな」って言いながら、ぼんやりと天井を眺めた。


あたしも真似して天井を見上げたら、滑らかな木目が流れる川面のように見えた。