運命みたいに恋してる。

これは、これは本気で慌てなきゃならない事態だ!


いくら結婚を反対されたからって、あの引っ込み思案なお姉ちゃんが、そんな思い切った行動をとるなんて信じられない。


恋をすると脳内にドーパミンが大量放出されるって聞いたことがあるけど……怖すぎるだろう、ドーパミン!


ひたすらオタオタするあたしの横で、大地が深いため息をついた。


「兄貴、やたら思い詰めた顔してたもんなぁ」


花梨ちゃんも腕組みをしながら難しい顔をしている。


「就活してんのかと予想したけど、外れたわね」


「そういうポジティブな方向に向かうタイプじゃねえんだよ。うちの兄貴は」


「ある意味、ポジィティブよ。前後の見境のなさは七海ちゃんといい勝負ね」


「ちょっと花梨ちゃん! なに冷静に状況分析してんの!?」


駆け落ちだよ!? 駆け落ち! 旅行に行ってるわけじゃないんだから!


そこんとこ、わかってる!?


「あたしだって心配してるよ。なんせ、あの一海さんだもの」


花梨ちゃんのその言葉に、あたしの不安と焦燥感はさらに倍増した。


そうなんだよ! なんせ、あのお姉ちゃんなんだよ!


自宅と、病院と、近所のスーパー以外の世界をほとんど知らないお姉ちゃん。


そのお姉ちゃんが、いきなり社会に放り出されてしまったんだよ。