運命みたいに恋してる。

「閉店!? 大地、柿崎さんから何か聞いてた!?」


裏返った大声を出すあたしに、大地がすごい勢いで首を横に振りながら答える。


「聞いてねえ! なんも聞いてねえよ!」


「いったいどういうこと!?」


「わかんねえよ! こっちが聞きたいくらいだ!」


向かい合ってギャンギャン叫ぶあたしたちを、花梨ちゃんが冷静に諭した。


「ふたりとも、うるさい。大地、ここのカギは持ってるの? 持ってるんならさっさと開けて」


「お、おう」


大地が慌ててカバンからカギを取り出し、ガチャガチャと玄関を開けようとするけれど、動揺しててうまくいかない。


あたしもすっかり驚いてしまって、さっきまでの重い気分もへったくれも、完全にぶっ飛んでしまった。


「お店を閉めるって……。柿崎さん、親友に託された大切なお店なのに」


「その親友って、スロヴェニアだかウズベキスタンだかに行っちゃったっていう、変人でしょ?」


「カンボジアだよ、花梨ちゃん」


「ネパールだ。七海」


カギをガチャガチャさせながら変なところで冷静にツッコミを入れる大地に、花梨ちゃんが言った。


「あんたのお兄さんも、目が覚めたんじゃないの? 七海ちゃんのお母さんに手酷く言われたんでしょ? 心機一転、就活してんじゃないの?」