あたしはそのままどんどん川岸に向かって引っ張られて、川べりの土の上に引き上げられて、そのままグッタリと横たわった。


……助かった。あたし、助かったんだ!


そう実感したら、全身が震えてきて、たまらなくなって大声で泣いた。


「う、うえぇ! うえぇーん!」


「かわいそうに。怖かったね。もう大丈夫だから安心して」


頭上から聞こえた優しい声に、しゃくり上げながら顔を上げると、知らない少年がいた。


色白な肌と、ブラウン寄りの柔らかそうな髪と瞳の色。


空に浮かぶ雲のように真っ白なシャツ。


すごく心配そうにあたしを見つめている、中学生くらいのお兄さん。


この人が、あたしを助けてくれたの?


「もう泣かないで。僕がついているからね」


そう言ってお兄さんが優しく微笑んだ瞬間が、あたしにとって運命の瞬間なの。


だって、それから十年もの長い間、一途に想い続けるあたしの初恋が始まった瞬間だから……。