でも素晴らしい夢の時間は、いつか覚めるもの。


そしてついに、目覚めたあたしの目の前には……。


「一海さんに恋する、大地がいたわけね。七海ちゃんも、つくづく因果なタチだよね」


花梨ちゃんの同情気味な声に、あたしはガクッと脱力した。


そうなの。そこなの。


完璧な夢の中でさえ、お姉ちゃんは大いなる壁となって立ちはだかって、目覚めてさえも立ちはだかっている。


うちのお姉ちゃんって、なんなの? ラスボス?


お姉ちゃんはあたしにとって、昔からずっと庇護すべき対象だった。


いいか悪いかはともかく、可哀そうなお姉ちゃんを守ってあげなきゃって思ってた。


それが今じゃ、ぜんぜん立ち位置が違っちゃってるというか、羨望の対象だよ。


っていうより本音で言うと、嫉妬の対象。


ジリジリと胸の奥が焼けるような、この不快な感情は、やっぱり嫉妬と呼ぶべきものだと思う。


「七海ちゃんが、一海さんに嫉妬かぁ。まさかこんな日が来るとは思わなかったね」


「うん。人間って、明日どうなるかわかんないね。まさかお姉ちゃんがラスボスになるなんて」