「まいったよな。まさかこんな噂が立つとは思わなかったよなあ」


大地が話しかけてきたけれど、あたしは返事もできずに下を向いたままだ。


「おい。なにもそんな不機嫌そうな態度をとることないだろ? べつに俺が噂を流したわけじゃねえんだから」


ずっと下を向いて無言で歩いているあたしを、大地は怒っていると思っているらしい。


それでいい。そのまま、あたしの本当の気持ちにどうか気づかないで……。


「とにかく俺、当分店には行かねえから」


「え⁉︎」


あたしは思わず顔を上げて立ち止まり、大地を見上げた。


「しばらくおとなしくしてないと、またチクられるだろ? さすがに親呼び出しはマズイからな」