血相変えた柿崎さんとお姉ちゃん、そして大地が交番に駆けつけて来たのは、それから約三十分後だった。
「七海ちゃん! 大丈夫かい⁉︎」
「な、七海! 七海ぃ!」
「おい、七海! どういうことだよ⁉︎」
しょぼくれてパイプイスに座っているあたしに、矢継ぎ早に声が掛けられる。
情けなくて顔も上げられないあたしは、上目遣いに落ち着きなく視線を走らせた。
『巡回』、『地域安全』、『女性相談』の文字や、あちこちに貼られた交通安全ポスターのどれもこれもが、いかにも警察な雰囲気満点。
それらのアイテムに囲まれて、あたしは身を縮めた。
あぁ、結局、カフェまで連絡がいってしまった。
ぜんぶ優太郎の誤解だって一生懸命説明したんだけれど、だからって「はいそーですか」って帰すわけにはいかないって言われて。
きちんと保護者を交えて、事実確認をしなきゃだめだって言われた。
本当は学校にも連絡が行くところだって言われて、冷や汗をかいた。
「わたしが桜井七海の姉です。このたびは妹がご面倒をおかけして申し訳ありません」
ぺこぺこと何度も頭を下げるお姉ちゃんに、優太郎が懐かしそうに声をかける。
「久しぶりだな。元気そうでなにより」
「え? あの……?」
「俺だよ。イジメッ子の優太郎」
「……あ!」