「ほとんどストーカー案件だったよね。七海ちゃんって危険人物」


「人の切ない初恋物語を、過去の未解決事件みたいに言わないでくれる?」


「だってあの頃は、あたしまでドブ川通いに付き合わされて散々だったし。すごい執念だったね」


「そりゃそうだよ。運命の相手なんだもん」


あたしは熱いため息をついた。


どうしても忘れられないの。いつも心の片隅に彼は存在していて、あたしの恋心を独占し続けてきた。


クラスの女子たちが『カッコイイ!』って騒ぐ同年代の男の子たちを横目で見ながら、あたしは同じ夢を見続ける。


いつかどこかで彼と再会して、運命の恋が叶う夢を。


それでも、心のどこかであたしは知っているんだ。


現実ではたぶん、この初恋が叶うなんてことは、それこそ夢物語なんだってことを。


そしてあたしは、名前すら知らない彼のことを生涯忘れられずに生きていくんだろうな。


切なくてちょっぴり悲しい、これがあたしの初恋物語だ……。