「実は兄貴には現在、頭痛のタネがあるんだよ」


「頭痛のタネ? どんな?」


「店だよ。あのカフェ。あれは兄貴と大学時代の先輩が、共同経営している店なんだ」


へえ、そうだったんだ。


てっきり雇われていると思っていたけど、経営者だったのね。


あの若さでお店を運営するなんて、すごいなぁ。


「その先輩ってのが、とにかくすっげえ変わり者で豪快な人なんだけど、妙に兄貴とウマが合ってさ。ふたりは大親友なんだ」


「ふうん? 聞いてる分には性格は正反対っぽいのにね。それで?」


「経営の素人同士がいきなり始めた商売だから、いろいろ大変そうだったけど、ふたりは本当に毎日楽しそうだった。ところが……」


そこで言葉を切った大地が、困ったような笑っているような、なんとも複雑な表情になった。


「出ちゃったんだよなぁ」


意味がわからず、あたしは首を傾げた。


「出たって、なに? まさかお店に幽霊でも出たの?」


「いや。出たのは先輩の悪いクセ。とつぜん店から消えちまったんだよ。あの人」


「え!?  なんで!? 大切なお店をほったらかしてドコ行っちゃったの!?」