森の奥の沼の話【短編】

ある日の昼下がり

驚いた

彼が

絵描きの彼が

突然、現れた…







「君はここにいるの?」

沼の淵に膝まづき、沼に向かって語りかける彼

私は押し黙って様子を伺っていた


「僕は君に申し訳ない事をしたと思っている」


「今さら伝えても遅いのかもしれない…けれどちゃんと伝えておきたくて…」


「僕が大切な人と言ったのは若くして亡くなった僕の母だよ」







私は少し手が震えていた







「あの時、僕は特に何も気にせず君に答えたんだ。母の事を大切に思う気持ちに嘘はないからね」


「だけど、後になって気づいたんだ。もしかして君の事を傷つけたんじゃないかって…だから、ちゃんと話をしたかった、なのにそんな時に限って大きな仕事が舞い込んで…僕は長い間、この土地を離れていたんだ」









私は


ゆっくりと目を閉じた