玄関から廊下に出ると、ちょうどエレベータが止まった。 運転手を従えた綺樹は少し変わった。 以前は捨てられた猫のような雰囲気があった。 今は少し頬の線が柔らかくなって、全体に柔和な雰囲気があった。 見つめそうになって、目をそらす。 「凄い荷物だな」 運転手がスーツケース4つを玄関に運び入れた。 四角い革張りにエンボスで紋章らしきのが押してある。 「引き上げてきたのか?」 思わずそう聞いた。