バスローブを着た綺樹が浴室から出てきて、涼の姿に驚いて目を見開いた。 無表情で艶の無い瞳とあう。 「お先に使ったよ」 涼の雰囲気に、穏やかな口調で言い、微笑を浮かべた。 「どうぞ」 綺樹は洗面台側に身を寄せた。 寄せなければ通れない広さではないが、意思表示だった。 こういう時に相手を逆なでしてはいけない。 いくつもの誘拐を経験して、その間合いは十分に分かっていた。