「まだ傷が完治していないんだろ。 アルコールはダメなんじゃないか?」 涼はしゃべりながら、空席になっていた綺樹の向かいの席についた。 「それに煙草もだ。 前から言っているけど」 綺樹は黙ったままだった。 思いもしなかった人物の登場に、涼の背広姿を初めて見た、なんて考えていた。 年の割に、背広に着られている感じが無いのは、その仕立ての良さだろうか。 生地の織やタイの合わせ方など、涼に似合っている。 妻の趣味はいいらしい。