薪ストーブの煙突工事は、延期した。

鷹野が伏せっているのだから、壁に穴を開けるような工事の音はうるさいだろう、と。



薪の入らない、薪ストーブ。



雅の腕をきつく掴み、鷹野は。

その腕ごと、凱司に投げつけるように突き飛ばした。


悲鳴も上げずに、雅の体は、凱司の足元に倒れ込む。




「…大丈夫か」


屈んで雅を助け起こす凱司に、雅は小さく頷き、差し出された手を、取った。

冷たく震える指先は、凱司の手に包まれ、鷹野に背を向けたまま、唇をも細かく震わせた。





「………いらねぇ…」


熱の下がりきらない体には、負担が大きいのか、息を乱す。





「……いらねぇんだよ!!」


てめぇに惚れてる女なんか!!!

てめぇのもんなんか!!!





吼えるように叫んだ鷹野は、テーブルの上から灰皿を取り上げると、思い切り。

使う予定すらなくなりそうな薪ストーブ目掛けて、投げつけた。



耐熱ガラスの割れる音に、雅もまた壊れたように、泣き出した。