「え、あたしひとりで行けます」

「我慢して送られろ」

「だって凱司さん…目立つ」



予定通り、鷹野息吹に職を与えた。
さほどの広さもない、小さなカフェバー。

夜逃げしたままの、まだ酒類もグラスも、安っぽいビーズ製のコースターまでも残された状態で、凱司の実家が占拠した物件。

そこに息吹をあてがった。

従業員という名目の、監視を付けて。


クリーニングを入れるのが、明日の午後。

息吹は明日、凱司と、監視を兼ねた男と共に、店に入る。

入れば、しばらく外に出す予定はない。



「明日はひとりで出してやるから」

「…ほんとに?」

「ああ。あ、明日の朝まで駄目か……」

「…えぇぇ…」


制服を着て、通学バッグを肩から斜めに掛けた雅は、髪をポニーテールに結い上げてある。


鷹野はしばらく見つめていたが、ふと雅に近付き、そのフラップショルダーを、黙ってぺろりと捲った。