私は不眠に苦しむようになった。勤め先の塾でもぼんやりして、簡単な計算や英単語の綴りを間違えた。塾長は私の異常に気づいているようだったが、素知らぬふりでパソコンに向かっていた。


だが、私にはそれがありがたかった。いつものように淡々と、空気のような存在で、給金を拝受するための義務をこなすほうがましだった。


そして、休憩時間になると、携帯のメールをチェックした。あれから何度も田島と会い、二人の休みが重なる時にはなるべく会うようにしていた。これは私の思い込みかもしれないが、田島も私と会っている時のほうが、気が紛れるようであった。


そして、今度の休みには、彼に付き合って、例の骨を探しに海岸に行く約束を組んでいた。私は、その行為が、田島にとってどのような意味を持つのか聞いてみたいと思っていた。そして、もし、鳴る骨を探すという行為に、罪を洗い流してくれる言い伝えでもあるのなら、私も田島のために本気で探そうと決めていた。


「Crime……sin……sin……crime……」


授業に遅刻して、いつも行う英単語テストを受けられなかった女子高生が、ぶつぶつとつぶやきながら答えを書いていた。監督する私の頭の中にも、そな呪文のように繰り返される単語が流れ込んできた。


私は、いつのまにかそうした単語をテストの中に組み入れていた。


罪。それは言葉にすると、唇から漏れ出る連続した音のつながりに過ぎないのだが、それが人間の思念や行動を大きく規定する。田島の罪は、crimeだろうか、sinだろうか。――どちらにせよ、私は田島を拒むつもりはない。話してほしいが、それを彼に強いることがあってはならない。あくまで自然に、田島の心から滑り出るように、だ。私は、そんなことを考えながら、生徒の頭上に視線を定めていた。