* * *


最初のつまづき以外は特に何もなく、無事に学校に到着すると何だか小さな人だかりができていた。


「あ、あれなに…?」

「何って灰吹優馬(ハイフキユウマ)じゃないの、あれ。」

「え、誰?」

「知らないのー?今年入学してきた男子でピカイチってみんな騒いでるでしょーが。あたしたちはクラス一番遠いから見もしないけど。」

「ほぇー…なんで今?」

「いや別に今日が特別ってわけじゃなくていつもあんなんだけど?」

「え、そうなの?だって今日いつもと時間変わんない…。」

「けど。でも大体朝って何かトラブルがあるじゃない。だから周り見る余裕ないっていうか…。」

「そ、そんなことないもんっ!」

「…そんなことない人は灰吹のこと知らないはずない。」

「…そ、そんな有名人なんだ。」


女の子たち(同級生もいっぱいいるけど多分先輩たちの方が多い感じがする)がいっぱいいて、挨拶してる…のかな?肝心の本人は全然見えない。


「そのー…灰吹くんはどこにいるのかな?」

「あの中央でしょ。ま、見えないけど。ってか数学のプリント分かんないところやるんでしょ?早く行かなくていいの?」

「い、行きます!そうでした!」

「行こ。」

「うんっ!…うわっ!」

「きゃっ!」


昇降口の前の人だかりを避けようとした瞬間、後ろに下がってきた女の子にぶつかった。あまりの衝撃にカバンを思いっきり落とす。