家元の寵愛≪壱≫



「では、そろそろ……」


淹れて頂いた珈琲も飲み終わり、

俺はゆの手を掴んで腰を上げた。


「気を付けてな」

「はい」

「じゃあ、また来るね?」


ゆのは父親に笑顔で挨拶をした。

すると、


「楽しみにしてるからな」

「え?」

「基樹さん!!ダメじゃない、それ言っちゃ……」

「あっ……」

「ん?………何?……お父さん、何なの?」


ゆのは解らないといった様子で2人を見ている。


言葉を濁す2人に、仕方なく助け船を出した。


「ゆの」

「ん?」

「親が楽しみにしてると言ったら……?」

「へ?………ッ?!////ちょっ、ちょっと、お父さん!!////」


ゆのは脳内で答えを導き出したらしい。

『楽しみ=孫の誕生』だと。


俺は慌てふためく彼女を見て、安堵する。


―――――いつかは、俺らにも………。



『もう、信じられない!!』等と口走りながら、

ゆのは俺の手を握り返し、


「隼斗さん、行きましょう!!」

「ん、………お義父さん、では……また」

「ん~」


柔和な表情の2人に会釈し、その場を後にした。