家元の寵愛≪壱≫



「ババァの魂胆かよッ!!」



俺は全身から気力が消え失せた。

こんな時にまで魔の手が伸びていようとは思いもしなかった。


盛大な溜息を零す俺の横で、


「えっえっえっ?!……何何?どういう事??」


1人だけ、悪魔の魔力も通用しない人物がいた。

ゆのは不思議そうな顔をして、

キョロキョロと俺らを交互に見回している。


「………何でもない。気にするな」


ポンポンと頭を優しく撫でると、


「私にも教えて下さいよ~」


可愛い声で俺の手を掴んだ。


「世の中には、知らなくていい事もあるんだ」

「えぇ~、何ですかぁ、それ~」



本当に会話する気力も失せるよ。

俺がここへ来る事は知ってた訳だから、

さっきみたいな、あぁいう雰囲気になると察しても不思議じゃない。


だが、腑に落ちない点が………。


あんな風に俺が土下座すると想像してたのか?


―――――いや、違う!!

あれはお義父さんによる、誘導尋問みたいなモノだ!!


お義父さんに土下座されたら、俺だってしない訳にはいかない。

って事は…………!?