家元の寵愛≪壱≫



家に上がると、


「いらっしゃい。遠くて疲れたでしょう?」

「いえ、大丈夫です。お気遣いなく……」


ゆのの継母になる予定のさゆりさんが珈琲を淹れてくれた。


居間にはゆのの母親の写真と遺影が飾られていて、

その隣にさゆりさんの亡くなったご主人の写真と遺影が

仲良く並べられて飾られている。



以前に聞いた話では、

この家は亡くなったご主人が建てたものらしい。

………大工だと言っていた。


取り壊す事もせず、引っ越しする訳でも無く

想い出の品として残しておきたいのだとか。



亡くなった人を想いながら、

新しい人生を歩んでいる2人に

何度お会いしても、俺の心は揺さぶられる。



俺もゆのと共に

こんな風に強い信念を持って歩んで行けるだろうか?


………いや、歩んで行けるかどうかではなく、

歩んで行かなきゃならないんだ!!



俺は持参した菓子折りを手渡し、

2人の前に正座した。



そして―――………