家に上がると、
「いらっしゃい。遠くて疲れたでしょう?」
「いえ、大丈夫です。お気遣いなく……」
ゆのの継母になる予定のさゆりさんが珈琲を淹れてくれた。
居間にはゆのの母親の写真と遺影が飾られていて、
その隣にさゆりさんの亡くなったご主人の写真と遺影が
仲良く並べられて飾られている。
以前に聞いた話では、
この家は亡くなったご主人が建てたものらしい。
………大工だと言っていた。
取り壊す事もせず、引っ越しする訳でも無く
想い出の品として残しておきたいのだとか。
亡くなった人を想いながら、
新しい人生を歩んでいる2人に
何度お会いしても、俺の心は揺さぶられる。
俺もゆのと共に
こんな風に強い信念を持って歩んで行けるだろうか?
………いや、歩んで行けるかどうかではなく、
歩んで行かなきゃならないんだ!!
俺は持参した菓子折りを手渡し、
2人の前に正座した。
そして―――………



