家元の寵愛≪壱≫



何度も角度を変え、啄むように軽く甘噛みし、

チュッと艶めいた音を響かせながら唇を離すと、


「んッ……んんっ」

「ッ?!」


咳払いに似た声が耳に届き、視線を巡らすと

数メートル離れた所にゆのの父親が立っていた。


「おっ、おはようございます」


狼狽しながらも挨拶を口にすると、


「近所迷惑になるから……とりあえず、入りなさい」

「…………はい」


――――ッ!!

今のは完全に見られたよな?!


あまりに久しぶりだったから、

ここが家の前だって事をすっかり忘れていた。


羞恥のあまり手で顔を覆うと、


「んッ?!」


ゆのが俺の袖を掴んだ。


「ん?………どうした?」


何かを訴えるような表情のゆの。

その瞳は俺をじっと見つめていた。

俺は彼女に応えるように優しく微笑むと、