家元の寵愛≪壱≫



朝食を取り終えた私は、

隼斗さんと共に離れへと。



「ゆの」

「はい」

「……悪い、着せて貰っていい?」

「えっ?」


隼斗さんは襦袢姿で苦笑い。


「どうかされたんですか?」

「………」


腰に左手をあて、右手は髪を掻き乱した。


……もしかして、緊張で?

いつもと変わらぬクールな顔つきだけど、

少しばかり青白いかな?


私はそれ以上、聞き返す事無く……。


「はい、もちろんです」


彼の後ろに掛けられている着物を手に取り、

彼の肩口へとそっとあてた。



家元といっても、お越し下さるのは

ご隠居や大御所様のご友人ばかり。

そんな方々相手に緊張しない方がおかしい。



私は彼の妻として、

出来る限りの力に……と、改めて実感した。