私はお義母様のもとへ。
お台所へと着くと、数人のお手伝いさんと共に
お義母様が割烹着姿で料理をしている。
「おはようございます。遅くなり申し訳ありません」
足早にその輪の中へ足を踏み入れると
「あら、もっとゆっくりしてて良かったのに」
相変わらず、優しい笑顔のお母様。
「左様にございますよ。これは私共の仕事ですから」
小鉢に和え物を盛りつけている牧さんが
同じように優しい笑顔で……。
「お弟子さん達でさえ、こんな朝早くから手伝っているのに、家元の妻がのうのうと布団に包まっていられませんよ」
「フフッ、ゆのちゃんらしいわね」
私はお義母様とお揃いの割烹着を着て、
盛りつけられた小鉢を宗和膳(脚付膳)に。
母屋にいるお弟子さん達は、
香心流の中でも核となる人達。
……家族同然に。
藤堂家では、初釜の日の朝食は
主力メンバーの弟子達を交えて
母屋の奥座敷にて戴く習わしのようで……。



