母屋の玄関には大量の草履が。
決して狭くない藤堂家の玄関。
そこに、所狭しと草履がズラリ。
さらに、まだ明けぬ前から
和服姿の人が慌ただしく廊下を行き交う。
「あっ!!家元夫人、おはようございます」
「おはっようございます」
玄関の土間に立ち尽くす私に気付き、
弟子の静乃さんが声を掛けて来た。
「明けましておめどうございます。本年も宜しくお願い致します」
「「明けましておめでとうございます」」
「明けましておめでとうございます。こちらこそ、何卒宜しくお願い致します」
さすが、静乃さん。
彼女が足を止め、私へ挨拶したものだから
周りのお弟子さん達が一斉に足を止めた。
しかも、見事にハマるような挨拶を。
ホント、香心流は彼女に支えて貰っていると言っても過言ではない。
「家元でしたら、奥の茶室に」
「いえ、私はお義母様のもとへ…」
「左様でございますか。では、私共は…」
一斉に深々お辞儀をする彼女ら。
私より、遥かに年上の方々なのに…。



