家元の寵愛≪壱≫



抱きしめられる感覚が身体にまだ残る中、

少し重い瞼を薄ら開けると、

隣りに彼の姿は無かった。


アラーム、まだ鳴ってないよね?

ふと、時計に目を向けると……4時15分。

えっ?

もう、4時を回ってるの?!

あっ!!

もしかしなくても、隼斗さん

アラームを解除して行ったみたいね。


ホント、いつも気を遣ってくれて

私を大事に大事にしてくれる。

感謝してもし切れない程の愛情を。


思わず、顔を綻ばせながら起き上った。


さて、今日は私にとっても『初釜』よ!!

隼斗さんは勿論の事、

お義父様にもお義母様にも

そして、香心流のお弟子さん達にも

ご迷惑を掛けないように

しっかり頑張らなくちゃね?!



『家元夫人』としても大事な1日だから

気合いを入れて臨まないと。



ベッドから出て、軽く身支度し、

隼斗さんがいる母屋へと向かった。