「ダメよ、今の時間は。どこの店も忙しいんだから」



そうは言うけれど……。

姉さんこそ、どうしてこんな時間に、こんな所をうろついているんだ?



「姉さんこそ。仕事は?」

「……今日は休みだったんだけど、ちょっと事務処理があってね」

「大変だね」

「まぁね。……そんなことより、ピークが終わるまでここで待つつもり?」

「うん」

「……倒れるわよ?」



クスッと小さく笑った姉さんは、僕の腕を無理やり掴むと「ちょっと涼んでいこう!」と言って歩き出した。


姉さんはこんなに暑いのに、薄手の長袖シャツを着ている。

仕事中も、社員はバイトと違う制服を着ていて、半袖か長袖、好きな方を選べるらしいんだけど、姉さんは長袖を着ていた。

……まるで、傷跡を隠すように……。