短志緒


次の瞬間には目を閉じていた。

それと同時に唇に柔らかい感触がした。

心臓を丸ごと掴まれているような緊張。

苦しくて、心地いい。

ファーストキスなんかよりずっとドキドキする。

そんな甘酸っぱい気持ちを味わうのもつかの間、私の唇を割って何かが侵入してきた。

ザラザラしたそれは、ジンジャーエールの味がした。

健吾の舌だと気付くと、少し悔しい気持ちが芽生える。

健吾のくせに、こんなキスをするなんて。

今までの女たちにも同じことしたの?

負けたくなくて必死に絡ませる。

こんなキス、したことがなかった。

どこからか溢れているおかしな感覚に堪えるべく、健吾の背にしがみつく。

一度目のキスが終えた頃には、何とも言えない衝動が身体中を巡っていた。

「梨香、俺、今ちょっとヤバい」

「ちょっとだけ?」

「いや、かなり」

健吾は迷っているようだった。

込み上げるものを必死で抑えているようだった。

それはたぶん、私が抑えているのと同じものだろう。