数年ぶりに入った健吾の部屋は、すっかり男の部屋になっていた。
小学生の頃は青を基調にしたベッドのシーツ、学習机にはマンガと何かのゲームのソフトが散らばり、床にもおもちゃの類いが転がっていた。
だけど、高校生になった彼の部屋は、光沢のあるグレーのストライブのシーツ、学習机には進学校の生徒らしく教材がきちんと積まれ、床には漫画雑誌が二冊重ねて置いてあるのみ。
「綺麗にしてるじゃん」
「たまたま。おととい片付けたばっかりなんだよ」
「あっそ」
「母ちゃんが掃除機かけるからって、やらされた」
「ふーん。そういえば今日、おばさんは?」
「イブだから飲みに行くって、メール来てた」
「相変わらずね」
どうやら橋本家には今、健吾と私、二人きりらしい。
「なー、とりあえず肉食おうぜ。油のにおいが俺の胃を刺激するんだよ」
「あたしもお腹すいたー」
ささやかなパーティーの始まりだ。



